Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

読書で世界旅行#9 イギリス 小さな命

日本で手に入るイギリス人作家の名著は数え切れないほどある。古典やファンタジー、映画化したものもある中で、この本に目が留まった。なぜなら表紙の絵が好きな作家、酒井駒子さんのものだったからだ。そして訳者は梨木香歩さん。こちらも好きな作家さんだ…

脳を知って己を知る

不安になったり落ち込んだり孤独を感じたり、どうして気分は落ち込むのだろう。天気のせいか?寝不足?仕事?人間関係? どうやら感情を左右しているのは脳らしい。 メンタル脳(新潮新書) 作者:アンデシュ・ハンセン,マッツ・ヴェンブラード 新潮社 Amazon…

読書で世界旅行#8 ドイツ 言葉の乱れを嘆く

『読書について』という本をめくったら、次のようなフレーズが並んでいた。 読書は、読み手の精神に、その瞬間の傾向や気分にまったくなじまない異質な思想を押しつける。(p.9) 多読に走ると、精神のしなやかさが失われる。(p.10) 読書は自分で考えることの…

今日、幸せ?

効率よく考えるのであれば、生まれてすぐ死ねばいい。 人はいかに無駄な時間を楽しむのかっていうテーマで生きてるんだよ。(p.7) 現代はコスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)、タイパ(タイムパフォーマンス:時間対効果)を重視する風潮がある。 生き物…

歪な愛の行方

この人の本は、読み始めると止まらない、という作家が何人かいて、恩田陸はその一人だ。 章や登場人物の視点などで区切りがあるものの、続きを知らなければ不安になるような、ほかのことが手につかなくなるような、中毒性のある魅力がある。 タイトルから話…

他人のノートを覗く

ノートには何通りもの使い方がある。 中学、高校で教科担当の先生にノートの作り方を指示され、ノートの取り方を学んだ人は多いのではないだろうか。特に指示のない場合は、板書された順にノートを埋めていくことが多い。 どういうわけか、ノートの種類は同…

外は草だらけ

遅ればせながら、春の訪れを感じるようになった今日この頃、花粉症に苦しみながらも春の草花を一目見ようと外をふらふらしている。 郊外に住んでいるので、身近な植物と言えば人の家や公園などの庭木や植え込みだと思っていたが、この本を読んだ後は周りには…

読書で世界旅行#7 アフガニスタン 自由を求めて

読書で世界旅行をしようと考えたとき、読書でも行けない国はあるだろうなという予感はあった。本が出版されることがまれな国か、日本語に翻訳されていない(日本で出版に至るほどメジャーでない)国の本。この本を見つけたときは嬉しかった。出版するために尽…

読書で世界旅行#6 チェコ 飽くなきガーデニング愛

意識してこれまで読んでこなかった作家の本を探していくと、多くの副産物を得ることができる。 チェコの作家カレル・チャペックのガーデニングについてのエッセイは、執筆当時の社会情勢と日本とは違うガーデン植物について知ることができた。 園芸家12カ月-…

読書で世界旅行#5 スウェーデン 旅に出る理由

旅行に行くのが好きだ。 国内でも国外でも(国外にはもっと行く機会とお金があればいいのだけど)、長期間、頻繁にというわけにはいかなくても、日常から離れて、自分のことなど誰も知らない場所でその土地をぶらつくのがとても楽しい。その土地の名産品を食べ…

アイデアの生まれるところ

本屋で本を買うときは、目的の本のほかに「あ、おもしろそう」と思って本を手に取ることが多い。そして後から著者紹介などを読んで大変著名な人だったと驚くことがある。この本の著者も多くの功績を持つ方だった。 クリエイティブディレクターであり、大学教…

読書で世界旅行#4 ノルウェー 夜と氷

ノルウェー作家の小説を読んだのは初めてかもしれない。 ノルウェーという国をよく知らないので、この本を読んだ後の訳者あとがきから小説の背景を学ぶと物語の深みを感じることができた。 氷の城 (タリアイ・ヴェーソス・コレクション) 作者:タリアイ・ヴェ…

読書で世界旅行#3 日本 茶道の入り口

昨年の冬に茶道を習い始めてから、書店の茶道関係の本棚をうろつくようになった。 割稽古をつけてもらってはいるものの、何をしたらいいのかさっぱりわからない。忙しいと月一回しか行けなくなり、ますます覚えられない。掛け軸も花もお菓子も茶碗も、何の教…

読書で世界旅行#2 韓国 無意識の差別

韓国旅行した知人が「パラレルワールドみたいだった」と言っていた。 街並みは日本にとても似ていて、人も物も親しみやすいものばかり。言葉だけが違うように思えた、と。 この本を読んで、差別に対する考え方や政治・司法についても近しいものがあると感じ…

読書で世界旅行#1 中国 家庭料理

2024年になりました。 今年もよろしくお願いします。 今年は何かテーマを持ってブログを書いていこうと思い、読書で世界旅行をしています。 mikatsubooks.hatenadiary.jp 記念すべき1か国目は『中国』です。 中華料理が好きなので、中国出身の著者による料理…

読書で世界旅行#0

2023年も今週いっぱいで終わる。 今年も何とか細々とブログを続けてこれて、2024年で3年目になりそうだ。 来年は何かテーマを持ってブログを書いても(本を読んでも)いいなあと思っている。 それで『読書で世界旅行』することにした。 人生を変えた本と本屋さ…

きみに読む物語

2023年が終わる前に、達成しておきたいことがあった。 『きみに読む物語』の原著『The NOTEBOOK』を読むことだ。 なんとか読み終えて、映画を改めて見たくなった。 きみに読む物語(字幕版) ライアン・ゴズリング Amazon 実話がもとになっているという『きみ…

行動を仕掛ける

ポイ捨て、ながらスマホ、傘の盗難、よくないことだしやめるべきだという認識はほとんどの人にあるものの、依然そこら中で見られる現象だ。 人は正論だけでは動かない(そもそも正論が通じる人は上記の行動をとらないだろう)から、問題解決につながる「仕掛け…

読む茶の湯

11月から茶道を始めた。 正座が続かず、すぐに足がしびれる。先生や他の生徒さんが正座で談笑やお点前をする中、感覚のない足を引きずりながら座椅子に手を伸ばしている。 こんなことで大丈夫だろうかと不安になる。 茶道は本来テキストで勉強するものではな…

記憶の中の恋

野菊の墓という短い悲恋小説を読んだ。 主人公の記憶の一部を切り取ったかのような話で、すぐ読み終えたけれどいつまでも考えてしまった。 野菊の墓 (新潮文庫) 作者:左千夫, 伊藤 新潮社 Amazon 恋愛小説の結末が悲恋になる要素には、たいてい以下が当ては…

自分のしつけ

環境が変わって新しい人に会う機会が増えると、自分の行動を見直すようになる。言葉遣いやついやってしまう癖を発見したり、相手の姿勢の良さや落ち着いた発言にはっとしたりする。 大人になったら自分のことは自分でしつけなければなあと思い、本棚に積読し…

車両清掃の裏側

新幹線に乗っていて、汚いなと思うことがまずない。 在来線も特に汚れてはいないけれど、誰かの置いていったペットボトルやこぼしたジュースの跡くらいはある。 新幹線に乗るのは長距離移動する客なので、もっと飲み物のごみや忘れ物も多いはず。 新幹線がき…

字のない葉書を求めて

『字のない葉書』という話を学生の時に読んだ。中学生の時だったか高校生の時だったか、細かいことは覚えていない。国語の教科書に載っていた。向田邦子という人が書いた戦争と家族の話だったことが印象的で、古本屋に行くたびにひそかに本を探していた。 や…

不思議の国ニッポン

自分の生まれ育った国では当たり前のことでも、外から見ると非常識だったり不思議がられたりすることがある。 「なんでそうなの?」と聞かれても、答えに困る。 海外のことで「なんで?」と思うこともある。 例えば、アメリカはどうしてあんなにも銃による被…

ざっくり生きよう

「正解」のない問題や不安に悩んで、どうしようもないとわかっていても、ついぐずぐずと立ち止まってしまう。 他人事なら簡単に解決策を提示できても、いざ相談して正論を突き付けられると違うんだよなあと相談したことを後悔したり、後になってあの時のアド…

使命を果たすための人生は幸せか

再生医療や移植技術の向上など、医学の進歩は目覚ましい。 倫理的な問題を除けば、動物のクローンを作ることも可能だ。 クローン技術で生まれたヒトは、臓器提供をするという使命を持って生まれる。それは果たして人なのか。その人は幸せに生きられるのか。 …

ドリトル先生

前回紹介した『ナチュラリスト』で、筆者が少年時代夢中になっていた本の一つに『ドリトル先生』シリーズがあった。 『ハリー・ポッター』や『ダレンシャン』、『赤毛のアン』は読んでいたけれど、有名な児童文学はまだ読めていないものが多い。 子供向けの…

自然と人間

生態ピラミッド(食物連鎖のピラミッド)の中で、人間はどの位置にいるかという質問に対して、最上位にいると思っている人がわりといるらしいと最近知った。 説はいくつかあるようだが、生態ピラミッドの最上位は肉食動物なので、人間はどうだろうか?肉は食べ…

体は食べたものでできている

健康に良い食事を心がけたいけれど、忙しい毎日の中で、そして物価高騰してる中で朝ゆっくり白湯をのんだりフルーツを取ったりする余裕ないんだよなあというのが正直なところ。 ただやっぱり体の調子がいいとそれだけで過ごしやすい。 簡単に体にいい食べ物…

生まれる前の状態に戻るだけ

床屋の主人は、「死ぬのが怖い」と洩らしたこともあった。私はそれに対して、「生まれてくる前のことを覚えているのか?」と質問をした。「生まれてくる前、怖かったか?痛かったか?」 「いや」 「死ぬとはそういうことだろ。生まれる前の状態に戻るだけだ…