Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

しがらみと共に生きる

「長男だから」「若いから」「大人だから」「結婚したのだから」と、無意識のうちに自分も周りも「こうあるべき」という思いにとらわれている。押し付けられる価値観に守られたり苦しめられたりしながら、それぞれの人生を歩んでいる。

最近知り合った人のお気に入りの作家さんということで、自分の世界を広げてみようと思いこの本を読んでみた。

主人公の時田翼は32歳。お菓子作りが趣味で田舎の農協勤務。母親が出ていったあと、大酒のみの父親と二人で暮らしている。この本は彼と彼の周囲の人々が恋愛、結婚、家族などのしがらみに悩みながら自分の人生を歩もうとする短編小説だ。

家長制度、お酌警察、キラキラネームなど、本人の意思とは関係なく、やめたくてもなんとなくやめられないものがある。気にせず環境に溶け込める人もいる一方で、どこか息苦しさを感じる人もいる。どちらが善でどちらが悪と決めつけるでもなく、新たな出会いの中でこれまでの価値観が揺らぎ、人生の新たな一歩を踏み出す様子が丁寧に書かれた本だった。

 

 

離乳食がやってくる

来月で子どもが5か月を迎える。離乳食が始まる。何をどんな風に食べさせたらいいのか全くわからず怖かったので、図書館で離乳食に関する本を漁った。

本というのは大変コスパのいいモノだと思う。ネットで調べても断片的であったり、順序(この場合は離乳食の勧め方)が分からなかったり、信用できるソースか判断しかねることがあるが、本はそれがない(もしくは少ない)。見返したいところは付箋を貼っておけばいいし、この本に至っては月齢・年齢別の離乳食・幼児食の進め方が見開きの表になっていて大変分かりやすい。つくり方や必要な道具も写真付きで載っているので、動画のようにいちいち止めたり戻ったりしなくて済む。

一週間ごとにどの食材をどれだけ食べさせたらいいか載っているだけではなく、少量の離乳食の冷凍保存方法や調理のコツも書いてある。アレルギーチェックの項目も載っているので、個人差はあるかもしれないがおおよその進め方はこの一冊で把握できる。筆者の子どもも好き嫌いが多かったとのことで、偏食の子どもでも食べたレシピが多いのもありがたい。

5か月から6歳までこの本が使えるようだ。6歳なんてもう大人と同じものを食べているだろうと思うかもしれないが、大人も食べられるレシピのアイデアも満載なのだ。月齢が上がるにつれて献立形式になっていくし、栄養バランスも考慮されているので何も考えず作っていける。大人用と子供用のレシピなんて毎日考えられないし、作る時間はない。離乳食を始める前から大変心強い味方を手に入れた。

離乳食づくりがちょっと楽しみになってきた。

 

 

心地よい家事

小さい子どもがいると、そして外がだんだん暑くなってくると、自然と家にいることが増える。いつ起きるか、いつ泣き出すかわからない子どもがいると、隙を見て進めていた家事も中断する。料理も掃除も洗濯も、自分のペースで思い通りになんてできない。でも、そうでなくてもいいと思える本に出会った。

家事の本はよく読むほうだ。他人の家事術や家の様子、工夫を知るのが楽しい。だけど、この本でこれまでなんとなくもやもやとしていた家事に対する思いが言語化されたように感じた。

家にいることが増えると、当然家が汚れる頻度が高くなる。部屋の隅や棚の上の埃にもよく気づくようになる。本当は一気に掃除するのが理想的だけれど、なかなかそうはいかない(もちろん面倒くさいという理由もある)。そんな時筆者は、さっとティッシュを取って、手に届く範囲だけ拭くのだとか。ちょっとだけ、ちょっとだけをつなげていけば、次第に部屋全体がきれいになってゆく。ちょっとだけのつもりでも勢いづいて、思っていたより掃除できたりもする。

自分は料理が好きで、漬物やパンも作る。といっても、漬物は野菜を洗って切って漬けるだけだし、パンもほとんどホームベーカリーに材料を入れるだけだ。料理が面倒くさいと思うことがない。皿洗いも好きなので、食器洗い機は持っていない。しかしこういうことを言うと、「こだわっていますね」とか、「食器洗い機を使った方が効率的ですよ」というようなことを言う人がいる。相手の言っていることもわかるし、時短=効率的なのもわかる。けれど、好きなことまで短縮しなくてもいいのではと常々思っていた。筆者もこだわりたい家事はこだわっていいし、面倒な家事は楽をすればいいと主張しており、なんとなく救われた気持ちになった。

なにより、自分の中にすとんと落ちたのは、自分が家に帰ってきて(もしくは過ごしていて)心地よいと思える状態であればよい、というものだ。ついつい「こんなんじゃ人を呼べないな」とか、他人視点で考えてしまいがちだが、結局家で過ごす時間が一番長いのは家主なので、家主が心地よいと思える空間を作る方が重要なのだ。自分が心地よいかどうかを軸にして、部屋を整えていけばいいと気づかされた。

すべてお世話されるような場合を除いて、生きている限り家事はずっと続く。であれば自分に心地よい家事を見つけていくのがいいなと思った。

 

カウンセリングと心

妊娠中だった時から、何度か産後うつについての説明を受けた。入院中に臨床心理士さんを紹介され、何かあったら相談するように促された。

カウンセリングの効用について、個人的にとても懐疑的だった。専門家とはいえ紹介されただけの人に、自分のことをあれこれと話そうという気が起きないし、育児不安を話したところで、「話を聞くこと」が仕事の人が何かしてくれるとも思えなかった。薬の処方もない。では、カウンセリングは何をするのだろうか。

筆者はまず、カウンセリングの全体を俯瞰し、その原論を見出そうとしている。「カウンセリングは怪しい」と思われがちな点について整理し、臨床心理学の分岐についても触れている。「心の問題」は社会、身体、精神の影響を受け、自身で対処しきれなくなり、「心」をどうにかする必要が出てきてやっと、カウンセリングに行きつく人もいるようだ。

カウンセリングは生存と実存のどちらの問題に対処するかで対応が変わる。もし生存が脅かされるような問題(眠れない、食べられない、日常生活を送れないなど)であれば、ただ話を聞くだけではなく、問題の核を探りながらしかるべき機関と連携し、まずは体を整えていく。それから生存のための作戦を立てる。

日常生活は問題なく送れているものの、実存(生き方、人間関係など)において行き詰まっている人には、自身の内面を知っていく冒険としてのカウンセリングがある。人の心の柔らかいところに目を向ける作業は、年月を要したり心の傷をえぐって不安定な気持ちにされることもあり、カウンセラーとしての技能を要する。

この本では、生存、実存両方の例が書かれている。具体的なクライアント像を用いて、カウンセリングという「話を聞くこと」を通して、心が変化する様子を目の当たりにすることができる。そしてカウンセリングがどのように終わっていくのかのパターンについても説明されている。

「じっと話を聞いてもらう」ことは、どうしようもない「心」の問題に行きついてしまったときに必要なのかもしれない。

 

 

もーいもい

お久しぶりです。子どもが生後2か月になりました。

体感としては、もっと時間がたっているように思っていましたが、まだ5月半ば。いいような、悪いような。

0歳からの赤ちゃん向けの絵本があるようで、あれこれ調べていると、絵本の世界も奥深い。教育的な意図はあまりなく、親の趣味として絵本を買い始めた。

「もいもい」

特にストーリーがあるわけではない。出てくる言葉のほとんどが「もいもい」だ。赤と青の「もいもい」が大きくなったり小さくなったり、増えたり減ったり、形を変えたりしている様子が描かれている。

東京大学の赤ちゃんラボというところが作った本らしく、赤ちゃんの間で人気らしい。うちの子も気に入っているらしく、「もいもい」を読んでみせるとニコニコとする。こちらも読んでいるうちになんだか愛着がわいてくる。

大人になって絵本を見る機会がほとんどなかった。長く読み継がれている名作も、新しく出てきた人気作もこの機会にいろいろと読んでいきたいと思う。

 

 

自分という木

31歳でカフェと雑貨の店「くるみの木」を始めた著者の35年間と人生の在り方を綴ったノンフィクションを読んだ。

何気なく通った道で見つけた気になる場所で、カフェを開きたいと思い立ち、彼女の人生の歯車は回りだす。子どものころからの夢、祖母からの教え、人との関わりが好きな自分に気づき、次々と行動に移していく。自分という木を育てるべく、種を蒔き、環境を整え、剪定し、そして次の世代を見据えてまた種を蒔く。

奈良にあるカフェ「くるみの木」は現在も営業中のよう。お客さんの何気ない一言から追加されたメニューも健在で、筆者のこだわりが息づいているよう。人を大切にし、人に喜んでもらうためにはを常に考えていたという筆者の言葉にも納得できる部分がある。

晩年に向けて住まいを新しくし、人生を振り返るとともにこれからの生活ややりたいことに胸躍らされる章では、人生はこれからだという勇気をもらった。

自分という木はまだ小さい。環境を整えて、これからどんどん成長していきたい。

 

読書の効用

前回のポストで出産についてのお知らせをしたので、まずはその報告を。3月5日に女の子を出産しました。諸事情あり子どもはまだ入院中のため、回復に専念しつつ、自分でも驚くほど回らない頭で本を一冊読んだ。これが「読んだら忘れない読書術」なので、何とも皮肉だ。

著者は精神科医の傍ら月20~30冊の本を読み、毎日SNSやメルマガを更新、かつ年に3冊は本を出版するという何とも超人的な人物だ。そんな著者の読書愛と読書の効用を惜しみなく詰め込んであるのが本書だ。

そもそも本はとてもコスパの良いものだ。1,000円程度で娯楽も知識獲得も叶う。時も場所も超えて自分の知りたいことに出会えるし、時間の制限もない。著者や登場人物に一方的に思いを募らせることもできるし、現実から離れて架空の世界に飛び込むことができる。願わくば、その発見や感動をいつまでも自分の中にとどめておきたいというのは自然なことであり、その素晴らしさを誰かに広めたり、議論できればなおいいだろう。けれど、読んだ本の内容を覚えておくことはなかなか難しい。読んだという記憶はあれ、どんな内容だったかを語れないという人は多いのではないだろうか。筆者はそれを大変もったいないと感じてこの本を執筆した。

読んだ内容を記憶するために「アウトプット」が重要だと筆者は言う。人間の記憶力には限界があり、「インプット」しただけでは知識の活用には至らない。勉強法でよく紹介されるように、1週間に3回アウトプットすることで記憶の定着を図るのがいいようだ。アウトプットは人に本を紹介したり、メモやマーカーで印をつけたり、SNSやブログで感想を文字にしたりというのが当てはまる。1週間とはいかないが、本の内容を人に説明し、こうしてブログに書いていると、なんとなく内容が身についてきていると感じる。

まとまった読書時間が取れない人も多いだろう。そんな人に朗報なのがスキマ時間で読書した方が集中力が高く、読書効率が良いという情報だ。少しずつしか読み進められないように感じるが、その分内容に集中できる。「ここまで読む」と決めて時間内に読むようにするとさらに効果的なようだ。

その他にも良書の選び方や電子書籍と紙の本のメリットデメリット、著者おすすめの本の一覧など、読書に関するあれこれを知ることのできる一冊になっている。

これからの読書がさらに楽しみになった。