この人の本は、読み始めると止まらない、という作家が何人かいて、恩田陸はその一人だ。
章や登場人物の視点などで区切りがあるものの、続きを知らなければ不安になるような、ほかのことが手につかなくなるような、中毒性のある魅力がある。
タイトルから話の予想ができないところも好きだ。
恋人同士と思われる男女が、同棲を解消し、最後の夜を過ごす場面から物語は始まる。二人はそれぞれの思いを持ちながら、相手がある人物を殺したのではないかと考えている。そして最後の夜に真相を知りたいと思っている。
男女それぞれの視点で交互に語られていくことで物語は進んでいくが、主人公たちもさることながら、読者も二転三転する展開に翻弄されていく。
恋愛において運命性を感じたり、自分にはこの人しかいないと思い込んだり、障害があることでより盛り上がったりするものの、いつの間にか閉塞感を抱いたり相手の些細なしぐさが気に障って冷めていくことがある。特別だった思い出が急に色あせて、奇妙な気持ちになることがある。
誰かを愛したことがあっただろうか?
主人公たちに突き付けられたこの問いが読者にも突き刺さる。
恩田陸の作品は人の心の暗いところを映し出すのが上手いと思う。
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