Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

スティル・ライフ

美しい景色を見たときにその美しさを人にうまく伝えることができない。

「きれいだった」とか「すごかった」とか、そういう感想を言いがち。

うまく言えないから、情景の美しさを言葉にできる人を尊敬している。

情景が目に浮かぶような文章を書く人はとても上手いと感動するのだけれど、この本の文章は群を抜いて上手いと思った。

 

主人公の「ぼく」はアルバイト先で佐々井と出会う。ミステリアスな雰囲気をまとう佐々井は、ほどなくしてアルバイトをやめるのだが、ある日突然連絡してきた。お金を作る作業を手伝ってほしいらしい。好奇心にかられた「ぼく」は、佐々井の仕事を手伝うことになった。これまでの「ぼく」なら関わることのなかった証券会社や犯罪の話、佐々井のものの見方が「ぼく」の世界を変えていく。

 

主人公は柔軟で相手を決めつけるような姿勢を持たなかったので、佐々井は最後に自身について明かせたのだと思う。「ぼく」の視点で物語が進むためつい佐々井との出会いで変わっていく主人公ばかりに注目しがちだけれど、佐々井も彼と出会い、影響を受けて人生で重要な仕事をするに至ったのだと思う。

 

情景描写が特に美しいと感じた箇所は、海辺で雪が降っている様子と、山の写真を延々と眺めているところ。

ここで伝えられないので、本を読んでみてほしい。