Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

いずれ訪れる死を想う

「仕事ばかり気にかけず、もっと遊んで、もっと家族を大切にすればよかった」

死を意識した時、もう長くないと知ったとき、人は人生について考え始める。

 

ある日曜日の夜、頭痛がして机にうつぶせたまま体が動かなくなった。目を開けることも心配する家族の声に応えることもできず、ぐにゃぐにゃになった体を救急隊員の人が運んでくれた。そのうちに意識もなくなった。

目が覚めた時、周りがよく見えなかった。視力が悪いのでそのせいかと思ったけれど、自分の手さえかすんで見えなかった。首も重くて起こせず、声も出ず、心と体が分離したみたいに何も思い通りに動かなかった。何が起きているのか全く分からないまま、また意識がなくなった。

ようやく意識がはっきりとしたとき、半身が麻痺していることが分かった。少しずつ快方に向かっていくといわれたのが救いだった。

入院中はもしここで人生が終わっていたらと考えていた。倒れたのが家だったのが幸いだった。もし路上なら、駅のホームなら、運転中だったなら、もしかしたら自分は今ここにいなかったんじゃないかと思った。

そして後悔した。転職に踏み切れずにいたこと、やりたいことを先延ばししていたこと、友だちと遊びに行く日をずっと決めていなかったことを考えていた。どうしてやらなかったんだと。

今回は回復したとして、次はどうなるかわからない。

その時に死が自分の前を通り過ぎていったと思った。そしてやりたいこと、変えたいこと、止めたいと思っていたことは行動していくことにした。

 

人生は長いようで、いつ終わるかもしれない。

どう生きていこうか、あの時の経験と死を想ってこの本を読んだ。

この本は終末期医療の専門家である医師の二人が、死に直面した患者たちの様子や会話の内容をそれぞれ十四からなる人生のレッスンに整理して構成されている。

 

ある人は後悔を、ある人は家族への愛を、ある人は長年の怒りの解放を、ある人は自分の恐れを受け入れることを、人生の最期もしくは死が横切った際に学んだ。

 

今まで死ぬかもしれないというような思いをしなかったという人は幸運だと思う、と同時に、いずれ誰しもに訪れる出来事にしばし思いをはせてもいいのではと思う。