Mikatsuの本棚

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犬が探した人生の目的

洋画を見た後に、原書を読みたいと思うことがある。

翻訳された本はもちろん素晴らしいし、たいていは日本語で読む。

だけど原書には作者・筆者の言葉が文字通り反映されていて、翻訳では表現できないニュアンスがあると思っている。

大学生の時に挫折した本を、この度何とか読むことができた。

 

 

映画版はこちら

主人公は犬。転生を何度かしながら人生の目的を探している。

最初の生は野良の子犬として生まれ、保健所で殺処分され若いうちに人生を終える。

2度目の生はブリーダーの下で生まれ、人生の中で最愛ともいえる人間の男の子イーサン(Ethan)の家の犬となる。小学生のイーサンと遊び、粗相をし、共に成長する。イーサンに彼女ができたり、事件に巻き込まれた時もそばにいるが、大学進学を期に会う機会が減っていき、寿命が近くなったため獣医の処置で人生を終える。大好きな少年の下で一生を過ごせたことをうれしく思う一方、この先のイーサンを案じながらの別れとなった。

まさかの3度目の転生。警察犬として訓練を受け、新たな人生が始まる。トレーナーやパートナーとの絆をはぐくみつつも、前世の生き方とは違う「仕事」をこなす人生。災害により警察犬としてはリタイアするものの、学校訪問など最後まで人に仕える人生を送った。

4度目の生を受けた時には、人生の目的が分からなくなっていた。飼い主は散歩や食事を適切に行うことなく、ついには遠くの農地へ置き去りにした。絶望的な状況の中、犬はここがかつてイーサンと過ごした家に近いことに気づき帰り道をたどる。ようやく会えた時には、イーサンはもはや少年ではなく、初老の男性となっていた。それでも犬は大好きな少年の最期まで共に過ごし、人生の目的を見出す。

 

主人公が犬で、語り手も犬。犬の目線からみる人間は人のそれとは違って面白い。匂いで判別したり、特定の言葉の意味だけ分かったり、悪気はなくても人を怒らせたり。犬目線で語られているので人の心情描写がない。犬が聞いた言葉と、感じた雰囲気が人の感情を読み取るヒントになる。犬が理解していないことでも読者は理解できる構図が珍しかった。

 

人にとって愛犬が特別であるように、犬にとっても飼い主が特別であると思えたら幸せだ。