Mikatsuの本棚

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読書で世界旅行#9 イギリス 小さな命

日本で手に入るイギリス人作家の名著は数え切れないほどある。古典やファンタジー、映画化したものもある中で、この本に目が留まった。なぜなら表紙の絵が好きな作家、酒井駒子さんのものだったからだ。そして訳者は梨木香歩さん。こちらも好きな作家さんだ。これは読むしかないと思い購入した。

 

第二次世界大戦時、未亡人のピアニストが拾ったのは、瀕死のスズメのひなだった。奇跡的に一命をとりとめ、成長していったものの、翼の変形のため自然界には戻れないことは明らかだった。

筆者とスズメの「クラレンス」はともに爆撃を逃れ、避難生活を送り、苦楽を共にした。

筆者を愛し、音楽を愛し、野生のスズメにはないと思われる才能を発揮したクラレンスは、希望の見えない時代に多くの人々の癒しとなった。

クラレンスの晩年、筆者はこのスズメの記録を残そうと思い立ち、出会いからこれまでの観察記録を綴った。精密な描写は、クラレンスとの生活を懐かしむだけではなく鳥類学の研究のように鋭かった。

 

小さく、人に比べて短い命。

筆者を含む人々が愛を感じ癒されたように、クラレンスが人々からの愛を感じ幸せに生きたと感じていたらとても嬉しい。

人と生きる動物たちが、安らぎを感じて生きていてくれたらと思う。