Mikatsuの本棚

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凶悪犯は反省するのか

殺人、性犯罪、放火

青少年がこれらの犯罪を犯すと、たびたび一大ニュースとなる

学校や家族構成、生い立ちなどが容赦なく公にされ、あれこれと憶測が飛び交う

若いからと更生の余地を残されるが、果たして彼らは反省し更生するのか

 

非行少年たちが収容される少年院で、児童精神科医の筆者はある疑問を持つ。

どんな凶悪犯罪を行った少年も、とても殺人や性的暴行を行ったと思えないほど穏やかで真面目そうな態度であることだ。

少年の中には自分は優しい人間だと述べたものもいた。

果たしてそれは演技なのか、別の理由があるのか。

 

非行少年たちと関わる中で、筆者はある共通点に気づく。

発達障害もしくは知的障害を持った少年たちがあまりにも多いことだった。

例えば、

・ケーキを均等に分けることができない(本の帯にもある通り、3等分ができない)

・簡単な図形の模写ができない(認知機能に歪みがある)

・短い文章を音読することができない(字が読めない、小学生レベルの漢字が分からない)

・行動の選択肢を複数持つことができない(お金がない、だから人から奪おうという選択肢しか思い浮かばない)

・行動がもたらす結果を想像できない(人を刺したらどうなるのかが予想できない)

など。

 

演技などではなく、障害が少年たちの認知を歪ませ、社会で生きにくいことで非行に行きついているのではないかという可能性が浮かび上がったのだ。

 

読んでみてあまりにもショックを受けた。

よくニュースで取り上げられる、犯罪者の少年は虐待を受けていただとか非行を繰り返していただとか、もともと生育歴や行動に問題があったから犯罪者になったという単純な理論が成り立っていた。

しかし、身体的・知的にハンディキャップを負っているために学習障害やいじめにあい、社会からこぼれ、意図せず犯罪に行きついてしまう構造が発見された。少年たちは反省以前に自分が犯した罪さえも理解していないケースもあるという。

軽度の知的障害では障害と認められにくく、IQに問題がない場合でもIQのテストでは測られない項目で著しく低いスコアが出たりと、一般的に「やる気のない子」「不真面目な子」として評価されるにとどまるケースもあり、特定が難しい。

※上記の児童すべてが該当するという意味では当然ないが念のためここに注記する。

 

サポートを受けていれば凄惨な結果に行きつかなかったのではないかと考えると、なんとも言えない気持ちになる。

 

認知療法を経ることで本人の能力向上と罪を理解し償う姿勢を持つようになることが観察されている。

完全に絶望的な状態ではないことが救いだ。

 

教育現場や矯正施設の役割の重要性を確認した良書だった。