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読書で世界旅行#4 ノルウェー 夜と氷

ノルウェー作家の小説を読んだのは初めてかもしれない。

ノルウェーという国をよく知らないので、この本を読んだ後の訳者あとがきから小説の背景を学ぶと物語の深みを感じることができた。

 

作者のタリアイ・ヴェーソス氏は20世紀ノルウェー最高の作家と称され、1970年に逝去するまで数々の文学賞を受賞し、ノーベル文学賞にノミネートされたこともあったようだ。

『氷の城』は1963年に執筆されているにもかかわらず、日本語訳が発行されたのは2022年なので、日本で彼の作品を知っている人は意外と少ないのだろうか。

 

(あらすじ)

ノルウェーの田舎町を舞台として、11歳の主人公シスは謎めいた転校生ウンに惹かれる。シスは周囲を遠ざけ暗い過去を持つウンと繋がりができた矢先、ウンは忽然と姿を消してしまう。厳しい自然の冬と凍てつく空気、すべてを包み込む森の暗闇の中、11歳の少女は喪失を経て回復へ向かっていく。

 

日本の冬も寒いけれど、物語の中ではより寒さを感じる描写にあふれていて、自然の厳しさが目に浮かぶようだった。夜や暗闇、氷の描写が多く、冷たく閉ざされた冬の時期であることを印象付けた。タイトルにある氷の城は、子どもだけでなく大人も畏敬の念を抱き、思わず見惚れてしまうほど荘厳な様子を表していた。

11歳といえば自分を子ども扱いされることを疎ましく思い、友達との関係に一喜一憂し、クラスの立ち位置なども気になってくる時期。とはいえまだまだ子どもなので、コントロールできない感情をぶつけたり、気持ちをうまく言葉にできないもどかしさも抱えてしまう。作品の中の子供たちの様子があまりにもリアルで、実際にあった話なのかと思うほどだった。

太陽の沈まない日と、太陽が沈まない日をもつノルウェー。自然に対する考え方の違いや民族・言語への思いも訳者あとがきで解説されていて、発見の多い一冊だった。