Mikatsuの本棚

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誰かの大切な人

誰かにとっては孤独に見え、つまらない人だとしても、別の誰かにとってはかけがえのない、大切な人であったりする。

この本の主人公は独身の中年女性たちだ。やりがいのある仕事にまい進し、親との死別を経験したり、親の介護に直面する中で、ふと、独り身であることを不安に思ったりする。疎遠だった親や友人のことを改めて振り返るとき、みなそれぞれの形で誰かを愛し、苦難の時を過ごし、人生を送っていると知る。

この本の好きなところは、独身と既婚を比べていないところだ。登場人物にはどちらも出てくるし、結婚することを親に期待されている人もいる。けれど、特段どちらが幸せであるとか、恋愛や結婚をしないことを焦ったりみじめに思ったりするような描写がほとんどない。孤独感にさいなまれるときはあっても、孤独自体は悪いこととして出てこず、どこか特別なものとして書かれているように感じた。

作者がキュレーターの経歴をもっているためか、美術関係の仕事をする登場人物や美術に関する話が多い。美術を通してつながった関係が、物語ごとに様々な方向に広がっていく様子も面白い。

ここ数年の間に祖父母や、親や、友人との死別を経験した。誰もがいつかは亡くなるし、死ぬときは大体ひとりだ。葬儀や告別式の場でぼんやりと考えるのは、亡くなった人との思い出だ。思い入れのある人もそうでない人も、静かにうつむく人も泣き崩れる人も誰かの大切な人なのだ。