Mikatsuの本棚

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自然のなかへ

レイチェル・カーソンの遺作を読んでみたいと思い手に取った。著者はこの本にもっと書き加えたいことがあったはずだ。それでも日本の美しい自然の写真と共に一冊になり、こうして読めることはありがたい。

著者と甥のロジャーが、海岸や森のなかへ出かけたときの話を中心に、自然現象や動植物の観察を通じて自然界を探検する様子が描かれている。大きな木から地面をはい回るコケ類まで、様々なものに目を凝らし、時間や季節の移ろいをその身で感じることを著者も甥も楽しんでいる。夜の海辺や雨の日の森など、子どもには危険に思われるような場所の中に身を置くことで、自然が人間に都合の良い存在ではないことをおのずと学べたのではないだろうか。

著者は子どもに自然と触れ合う時間を持たせることで、子どもの世界が広がり、豊かな人生を送れる人間になると信じている。たとえ親や周りの大人が花の名前や天体に詳しくなくても、一緒にその神秘を楽しめればそれでもよいとも言っている。子どもが成長し、自然に関係のない生活や職業に就いたとしても、鳥のさえずりや潮風を感じたときにきっと懐かしさを覚えるようになるだろうという思いには賛成だ。

地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはけっしてないでしょう。たとえ生活の中で苦しみや心配ごとにであったとしても、かならずや、内面的な満足感と、生きていることへの新たなよろこびへ通ずる小道を見つけだすことができると信じます。(p.50)

最近太平洋の海洋生物についてのドキュメンタリーを見た。広大な海の生き物たちは、したたかで、美しい。人間の手の届かない自然というものが海にはまだまだあって、神秘に満ちている。けれど、人間の影響は大きく、ゴミや乱獲により危機に晒されている場所や種も多くあることが分かった。人は自然の中の一部であり、切り離して生きることはできない。広大な自然の中での人は小さな存在ではあるけれど、文明の中では人は大きな力があるため、自然を守ることが可能だ。自然を守り、次につなげると同時に、近い未来二度と出会うことのできないかもしれない自然を愛したいと思った。