孤児として育ち、スラムに住み、学校などとは縁のないただのウエイターが、大人気クイズ番組で史上最高額の10億ルピーを勝ち取った。
それは不正か、天才か、奇跡か。
主人公のラムはスラムに住むウエイター。スラムでは誰かが警察に連行されるのは日常茶飯事だ。誰も気に留めない。そして今日はラムが連行された。罪状は、大人気クイズ番組で10億ルピーを見事勝ち取ったからだった。
孤児で、教養もなく、12問の多種多様なクイズに応えられるわけもない一人の青年が正解する方法は、誰が見ても不正に他ならなかった。しかし、彼は答えを知っていた。残酷な底辺社会で学んだことが、偶然にもクイズの答えになっていた。
貧困、殺人、売春、強奪、権力の腐敗、児童虐待、宗教対立。孤児のラムの生きている社会では当たり前にあった光景だった。育ての親がイギリス人神父だったために、英語を話せるようになった。養父亡き後はその日その日を何とか生きていた。理不尽な世界の中で、仲間と協力し、時に危険を冒し、出会いと別れを繰り返す中で、ラムは様々なことを学んでいった。そしてそれが運よく12問のクイズとなって、ラムのもとへやってきた。
世界的なベストセーラであり、2009年に日本で映画が公開された作品だということをこの本を買って初めて知った。作者がこの本を書くきっかけになったのは、インドで行われた貧困地域にインターネットを広めるプロジェクトだったそうだ。教養がなくても人は新しいことを学べるということを感じた作者は、スラム街出身の青年を主人公にすることを決めたそうだ。読書で世界旅行をしようと思わなければ出会わなかったであろう本だ。自分の流行に対する感度の低さにあきれるものの、いいタイミングで出会えたともいえる。
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