そろそろ本気で住宅購入を考えている。モデルルームや中古物件を何件か見て回ったけれど、結局これから何十年も住むであろう家を考えたところ、注文住宅に落ち着きそうだ。ハウスメーカーや工務店を何件か検討し、結局何がいいのかわからなくなってきた。賃貸住まいが長いと、嫌なら引っ越せばいいしと軽く考えられた。とりあえず変な間取りにならないように勉強しておこう。
家を建てる時に、価格、立地、利便性などは気にしがちだ。あとは最近重要視されている耐震性とか、機密断熱性とか。だけど間取りをどうするかは建築士の提案任せになっていることに気づいた。広告やサイトで間取りを見るのは好きだけれど、実際どんな間取りで住みたいかという希望はあまりにもぼんやりとしている。インスタや雑誌では流行りでおしゃれな空間が広がっているが、どうも自分が住むイメージが持てない。
そこでこの本だ。間取りの問題点と改善案が提示されている。建築やデザインのプロでも、お客様の要望を無下にすることができないため、いささか奇妙で非効率的な間取りで家を作ることはざらにあるようだ。任せすぎても建築士の好む間取りになって自分が住みやすいとは限らないが、こちらのぼんやりとした部分的な要望を押し通すのは危険だ。
家づくりで気にすべきポイントがいくつかあったのでメモしておく。
1. 実際の生活を想像してみる。
当たり前のようだけれど、2次元の平面的な間取りから3次元で実際の生活を想像するのは意外としていなかった。例えば、玄関入ってすぐに手洗い場があるとする。一見帰ってすぐに手が洗えて清潔に感じるが、現在家に帰って真っ先にすることといえば、リビングや部屋に直行して荷物を置いたりコートを脱いだりしている。そして洗面台かキッチンで手を洗っている。わざわざ寒い玄関まで戻って手を洗うことはないだろう。さらに考えると、玄関から手洗い場が見えるのはなんかダサい。他には、リビングを通って階段やキッチンに行く導線はどうだ。リビングでテレビを見たりゲームをしているときにいちいち前を横切られるのはうっとうしいだろう。キッチンが遠いのは嫌だし、リビングが北側にあると寒々しい気がする。便利そうな間取りはあくまで「便利そう」というだけで、実際生活すると不便である可能性は大いにある。
2. ネガティブシュミレーションする。
モデルルームに行くとどうしてもキラキラした生活ばかり想起させる。広い玄関収納、なんでも置けそうなウォークインクローゼット、子どもが遊べるプレイルーム、リモートワークスペースにスタディールーム。今の生活とかけ離れすぎて、なんかすごいぞとわくわくする。が、楽観的なシュミレーションばかりではよろしくないだろう。モデルが着ている服をいざ自分が着ると部屋着にしか見えないことなどざらではないか。家だって同じだ。広い玄関収納に何を入れる?雨の日に帰ってきたときこのおしゃれなタイルの玄関はどのようになる?プレイルームで遊ぶ時期っていつごろまでなんだろう(子どもがいないのでわからないが、実家には遊び部屋などなくても何とかなっていた)?スタディールームいる?など穿った見方はするべきだろう。
3. 家具を置いて部屋の広さを考える。
何もない部屋は広い。引っ越し前に賃貸の部屋を内見すると広いと感じても、いざ家具を持ち込んで配置すると意外と広くないと感じたことはないだろうか。間取りには基本的に家具は書かれていない。手持ちの家具や一般的な家具のサイズで間取りを作ってもらい、実際の部屋の広さや廊下の幅がどうなるか考えた方がいい。大きなベッドやソファで部屋がいっぱいになるなんて悪夢だ。
4. リビング、寝室の位置と方角に注意する。
暗いリビングは侘しいし、寝るだけの寝室が日当たりのいい位置にあっても意味ないのだ。日中はリビングにいることが多いのでできれば電気をつけなくてもいいくらい明るい位置に配置したい。玄関は北でいい。靴脱ぐだけだし。
5. 窓は大きければいいってもんじゃない。
窓が大きい家は開放感があって、明るい日が入るイメージがある。けれど、家が密集している住宅地で、開けない窓が出てくる可能性の方が高い。窓が多いと断熱性能が下がるので、これからも上がり続ける電気代を無駄に浪費する羽目になるかもしれない。窓掃除も大変そうだ。
6. 家の市場価値も考慮しておく。
家を買うなら終の棲家にするつもりだが、人間いつ何があるかわからない。こだわりぬいて自分だけの理想の間取りをかなえた家が、ほかの人にとって魅力的である可能性は低い。おしゃれと言われる中古住宅がしっくりこない理由はこの辺にもある気がする。シンプルイズベストかもしれない。
変な予備知識を持ちすぎると、それはそれでハウスメーカーや工務店ともめる気もしてきたが、一生に一度(にしたい)の大きな買い物なので、慎重に行きたい。