Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

読書で世界旅行#5 スウェーデン 旅に出る理由

旅行に行くのが好きだ。

国内でも国外でも(国外にはもっと行く機会とお金があればいいのだけど)、長期間、頻繁にというわけにはいかなくても、日常から離れて、自分のことなど誰も知らない場所でその土地をぶらつくのがとても楽しい。その土地の名産品を食べて、市場や建物を見て、海とかぼーっと眺めて、何もすることがない時間を過ごす。

旅行好きの筆者の旅行についての経験談と考察を読むと、自分の中で多くの気づきを得た。

かつて人類は遊牧民だった。そのため遺伝子レベルで旅への憧れがあるらしい。

現在はインターネットの発達により、わざわざ旅行しなくても海外のことを知り、物を買うことはできる。それでも百聞は一見に如かず、その土地を歩いて現地の人と話し、その土地でものを食べる体験をすることは、画面越しに見つめるだけでは得られない感動を生む。

言葉も自分の常識も通じず不安に不安になったり、ぼったくりにあって途方に暮れても、なぜかまたどこかに旅したいと思う人がいると思えることが心強かった。旅行記を書いている多くの(筆者が影響を受けた)作家についても紹介されていて、また新しい本を知るきっかけになった。

読書で世界旅行をすることは、もちろんその国に行く経験とは程遠いけれど、視野を広げ心に栄養を注ぐことに大いに役立っていて、自分はやはり旅行が好きだと改めて思った。

 

アイデアの生まれるところ

本屋で本を買うときは、目的の本のほかに「あ、おもしろそう」と思って本を手に取ることが多い。そして後から著者紹介などを読んで大変著名な人だったと驚くことがある。この本の著者も多くの功績を持つ方だった。

クリエイティブディレクターであり、大学教授であり、経営者である著者が、ちょっと立ち止まって考えられるようなテーマをかわいいイラストと共にまとめてくれている。

 

身近なもの、当たり前にあるようなものに別の視点を向けると、これまでとは違った見方、考え方ができることがある。

本書で扱われたテーマで印象に残ったものをメモ。

テーマ:「結果と過程」

願いをかなえてくれる魔法使いがいた。憧れの人と添い遂げたいという願いには、二人を老夫婦の姿に変えた。バナナをおなか一杯食べたいを言う願いには、その人をバナナでおなか一杯の状態にした。結果的には願いがかなったのだが、どちらも大変不満そうだった。

結果がすべてだといわれることが多いけれど、上記二つのケースは過程の方が大事だろう。過程を飛ばしては楽しめないことは案外多いのかもしれない。

 

テーマ:「古いシステムと新しい価値」

もともとある用途で利用されていたものを、別のことにも利用する例として、リスが雨どいをドングリを地面に落とすトンネルとして使っている様子が描かれている。また、解説にはガス会社がガス管を利用してインターネットサービスに事業を広げたことに言及している。

古いものを取り去ってまったく新しいものにするという考え方がある一方、今あるもので新しい使い方をする考え方もある。

 

目を通そうと思えば一時間もかからない本だけれど、考え出すと何時間でも時間を過ごせる本だった。

 

 

 

読書で世界旅行#4 ノルウェー 夜と氷

ノルウェー作家の小説を読んだのは初めてかもしれない。

ノルウェーという国をよく知らないので、この本を読んだ後の訳者あとがきから小説の背景を学ぶと物語の深みを感じることができた。

 

作者のタリアイ・ヴェーソス氏は20世紀ノルウェー最高の作家と称され、1970年に逝去するまで数々の文学賞を受賞し、ノーベル文学賞にノミネートされたこともあったようだ。

『氷の城』は1963年に執筆されているにもかかわらず、日本語訳が発行されたのは2022年なので、日本で彼の作品を知っている人は意外と少ないのだろうか。

 

(あらすじ)

ノルウェーの田舎町を舞台として、11歳の主人公シスは謎めいた転校生ウンに惹かれる。シスは周囲を遠ざけ暗い過去を持つウンと繋がりができた矢先、ウンは忽然と姿を消してしまう。厳しい自然の冬と凍てつく空気、すべてを包み込む森の暗闇の中、11歳の少女は喪失を経て回復へ向かっていく。

 

日本の冬も寒いけれど、物語の中ではより寒さを感じる描写にあふれていて、自然の厳しさが目に浮かぶようだった。夜や暗闇、氷の描写が多く、冷たく閉ざされた冬の時期であることを印象付けた。タイトルにある氷の城は、子どもだけでなく大人も畏敬の念を抱き、思わず見惚れてしまうほど荘厳な様子を表していた。

11歳といえば自分を子ども扱いされることを疎ましく思い、友達との関係に一喜一憂し、クラスの立ち位置なども気になってくる時期。とはいえまだまだ子どもなので、コントロールできない感情をぶつけたり、気持ちをうまく言葉にできないもどかしさも抱えてしまう。作品の中の子供たちの様子があまりにもリアルで、実際にあった話なのかと思うほどだった。

太陽の沈まない日と、太陽が沈まない日をもつノルウェー。自然に対する考え方の違いや民族・言語への思いも訳者あとがきで解説されていて、発見の多い一冊だった。

読書で世界旅行#3 日本 茶道の入り口

昨年の冬に茶道を習い始めてから、書店の茶道関係の本棚をうろつくようになった。

割稽古をつけてもらってはいるものの、何をしたらいいのかさっぱりわからない。忙しいと月一回しか行けなくなり、ますます覚えられない。掛け軸も花もお菓子も茶碗も、何の教養もない自分に毎回あきれながら恥ずかしくなりながら楽しんでいる。

茶道とは何だろうか。日本の歴史や文化とも深くかかわっているため、安易にこれだと言えず、けれども少しでも知りたいと思い読みやすそうなものから手を出すことにした。

入門した人、したい人のための本。とてもありがたい。

茶道の上澄みすら知らない身としては、まずは広く浅く知るところから始めたかったのだ。

お点前の種類や茶道具の名前、お菓子の種類、伝統工芸や掛け軸(書)の意味。習い始める前にこの本を読めていれば、稽古場で赤面する回数も減っていたかもしれない。抹茶のお店、茶道体験のできるところ、扇子や着物の老舗の紹介もあり、今後道具をそろえることになってきた際はぜひ参考にしたい。

今まで興味がなかっただけなのだろうけれど、茶道に関する博物館や美術館は意外と多い。東京・京都が圧倒的に多いので、どこかで旅行がてらいけたらと思う。

 

読書で世界旅行#2 韓国 無意識の差別

韓国旅行した知人が「パラレルワールドみたいだった」と言っていた。

街並みは日本にとても似ていて、人も物も親しみやすいものばかり。言葉だけが違うように思えた、と。

この本を読んで、差別に対する考え方や政治・司法についても近しいものがあると感じた。

「それ、差別ですよ」

と指摘されたら、ぎょっとする(攻撃的に感じる)人は多いと思う。差別がよいことと思っていない人が大半だからだ。

差別といえば、どんなものがあるだろう。

・女性

・障害者

セクシュアルマイノリティ

・民族、人種

・宗教

多くの人はマイノリティに対して意図的に差別することはないかもしれないが、著者はマジョリティによる無意識の差別について啓蒙している。

 

例えば、日本では女性の社会進出に関して、女性の就業率の高まりや管理職に就く女性が目立つようになったため、男女平等であるように感じるが、収入比率や管理職の男女比率で見た場合、平等にははるか及ばない。

ここで「女性は野心がない」「子育てでキャリアをあきらめがち」などの意見が散見されるが、野心がないとあらかじめ決められること、子育てかキャリアかを選ばされるところにすでに差別が潜んでいる。管理職になる気がないとあらかじめ見なされている環境で、社会での男女の評価はすでに差が生じている。あるいは、もっと前に。

 

無意識の差別は下記の質問からも見ることができる。男性が「私」なら、

・私がたびたび昇進に失敗した場合、その理由は性別ではないだろう。

・私は夜に公共の場所を歩くことを怖がる必要がない。(p.33)

さらに、

・私が性的被害にあったとき、私のその時の服装について責められることはないだろう。

・私が感情的になったとしても、同じ性別の人が一般的に「感情的だ」と言われることはないだろう。

 

白人が「私」なら、

・私と同じ人種に属するすべての人々を代表して話すようにと言われることはない。

・私が店などで責任者を呼ぶと、ほぼ間違いなく自分と同じ人種の人が出てくる。(p.32)

 

※質問は1989年時点のもののため、現在のアメリカで必ずしもこの状況であるわけではない。

 

マジョリティはマイノリティにたいして「嫌い」という感情を表し、攻撃的な言葉を投げかける場合がある一方、マイノリティに対しては(受け入れてもらうためには)感情的にならず丁寧に説明するよう求める。

 

韓国やアメリカの事例が多いが、日本にも当てはまるケースが多数あり、差別を考える上で大変勉強になる一冊だった。

 

読書で世界旅行#1 中国 家庭料理

2024年になりました。

今年もよろしくお願いします。

今年は何かテーマを持ってブログを書いていこうと思い、読書で世界旅行をしています。

mikatsubooks.hatenadiary.jp

記念すべき1か国目は『中国』です。

中華料理が好きなので、中国出身の著者による料理本を読みました。

自分でご飯を作って食べることが多いので、時短料理や簡単なレシピなどを見たりしますが、調味料を持っていなかったり、野菜をうまく取れなかったり、なんか最近同じものばかり作ってる気がすると悩んだりすることが多いです。毎日のことなので簡単に作り続けられるレパートリーが欲しいなと思っていたところ、この本に出会いました。

 

この本で紹介されている料理は、中国の家庭料理がメインです。肉も野菜も汁物も、基本を押さえればあとはどの食材でも応用が利くレシピばかり。写真も多く、気をつけるべき工程も具体的に記載してあるので覚えて作れそう。調味料も特別なものがなく、本の中で何度も使われるので買ってしまって余る心配もなさそうです。

 

10品をマスターして、繰り返し作れるように練習します。

 

読書で世界旅行#0

2023年も今週いっぱいで終わる。

今年も何とか細々とブログを続けてこれて、2024年で3年目になりそうだ。

来年は何かテーマを持ってブログを書いても(本を読んでも)いいなあと思っている。

それで『読書で世界旅行』することにした。

読書で世界旅行とは何をするかというと、世界の国々の著者が書いた本を読んでいくこと、ただそれだけ。ざっくりと読書でなにか新しいことがしてみたくなったのだ。

 

現在は圧倒的に和書を読むことが多く、アメリカ作家が次いで多い気がする。日本語と、なんとか英語が読める程度なので、邦訳されていなければ基本的には読めないが、意識して世界各国の著者の本を読んでみようと思う。

 

調べてみると似たようなことをしている人が何人かいた。その人たちが読んでいる本で、日本で手に入りそうなものはぜひ取り入れていきたい。

今回読んでいる『世界の本好きたちが教えてくれた人生を変えた本と本屋さん』にもたくさん本が紹介されているので、こちらも参考にしていきたい。この本には世界の本屋と図書館もイラスト付きで紹介されていて、世界の本やめぐるのもとても楽しそう。

 

ブログを読んでくれた皆さま、ありがとうございました。

定期的に見に来てくださる皆さま、励みになっていますありがとうございます。

どうぞよいお年をお過ごしください。