やっぱり戦争は無理
読んで愕然とした絵本がありました
舞台はアフガニスタンのある村。作者は日本人。以前訪れた村と人々がモデルなのだとか。
「ぼく」こと村の少年ヤモは世界一美しい村、パグマンに住んでいる。
春にはすももやサクランボの花が咲き乱れ、夏には山盛りの果物が実る。
そして果物を売って生活の足しにする。
戦争へ行ってしまった兄に代わって、父と町へサクランボとすももを売りに行ったヤモは、様々なお店や匂いを楽しみながらサクランボ売りをする。
町にはいろんな人がいて、食堂ではいつもと違う食事を楽しむ。
そして帰りに羊を買って、また美しい村へ帰っていく。
ヤモの大好きな村。
色彩豊かでやわらかな印象の絵の終わりは、くすんだ黄色のみを背景にこの言葉だけが締めくくる。
このとしのふゆ、村はせんそうではかいされ、いまはもうありません。
今はもうない美しい村と、ヤモたちがどうなったのかも書いていない終わりにぐっと胸が苦しくなりました。
一気に夢も希望もない終わりに突き落とされた気分です。
でも戦争ってこういうことなんだろう、と思わされます。
この話は作者の小林豊さんの実際の体験をもとにしており、アフガニスタンを旅した際に出会った人々が、今どこで何をしているのかわからないとあとがきにありました。
自分や誰かの生まれ故郷や友達の住んでいる国、旅行で行ったお気に入りの場所が理不尽に壊され、そしてその景色も人々もなくなってしまう、戦争はそれを可能にする。
やっぱり戦争は無理。