Mikatsuの本棚

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逃げる場所と受け入れてくれる人がいること

学校の独特の雰囲気になじめず不登校になった主人公

西の魔女こと祖母のもとで過ごした1カ月余りの日々が人生のささやかな支えとなる

中学生の時に出会ってから、手元に置き続け幾度となく読んだお気に入りの一冊です

 

あらすじ

中学生の主人公、まいはあることをきっかけに不登校となり、田舎の祖母のもとで過ごすこととなる。魔女である祖母と生活する中で、まいは自分の意志で決めて生きていく重要さを学び成長していく。そして祖母はまいにある約束をする。

しかし、ある出来事が原因で二人はわだかまりを残したまま、両親との引っ越しのため祖母のもとを後にする。

それから二年後、魔女の死と共に悲しくも愛にあふれた約束が果たされる。

 

魔女(祖母)が死んだという知らせと共に、主人公が過去を振り返る回想録として話が始まる。学校という独特の空間になじめず苦しんでいた主人公が、一時の休息期間を経てまた自分の生活に戻っていく。自身を振り返り、人生において重要なことを学んでいけたのは、祖母の家という逃げ場所と手放しで受け入れてくれる祖母の存在が欠かせない。

 

世代が変わると、それまで良しとされていた「常識」や求められるスキルなどは全くといっていいほど異なってくるので、参考になりにくい現実はありながらも、人生の先輩としての考え方や生きる上で重要なことは聞けるときに聞いておいたほうがいい。

 

この本の名言の一つに以下の文がある。

自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか

「我慢して」「逆境に耐えて」「一生懸命に」「石の上にも三年」が今も何となく美徳としてとらえられているものの、確かにサボテンを水中に入れたところで環境に適応する前にだめになってしまう。そもそも環境に適応できた種が現在こうして生きているのであって、生物である人間にもこれは当てはまる。

 

当たり前といえば当たり前だし、やや詭弁めいたところもあるけれど、支えてくれる人がこの言葉を言ってくれることは、やはりとても救われる。

 

結局主人公は、祖母の死の知らせを聞くころには、祖母と過ごした日々は過去のものとして思い出すことはなかったけれど、祖母が果たした約束と祖母と離れた後も習慣化した行動は人生の中の支えとなっていった。

 

そういう思い出が積み重なって自分ができていったことを振り返れるために、この本が好きなのかもしれない。