『あいさつ』
Mさんはある夜、橋の上にいる夢を見た。
Mさんが橋を渡っていると、向こう側から男の人に支えられてMさんのおばあさんが歩いてきた。
おばあさんは今はもう末期がんを患っていて寝たきりになっていたので、歩いていることが嬉しかった。痩せこけていた顔もいくぶんかよくなっているように見えた。
「おばあちゃん!調子よくなったんだね」
Mさんがそういうとおばあさんは笑って頷いた。
Mさんとおばあさんはそのまますれちがい、それぞれの方向に橋を渡っていった。
翌日の午前中に、おばあさんが静かに息を引き取ったと連絡があった。
慌ただしい通夜と葬儀の中、Mさんの妹が昨夜おばあさんが来てくれた、と話した。
おばあさんが夜にぽんぽんと頭を撫でてくれたという。その後夢におさげをした女の子が出てきたというが、服が古めかしく、なんとなくおばあさんの若い頃だと悟ったという。
Mさんと妹がおばあさんを夢に見た日には、おばあさんはすでに昏睡状態であったことがわかった。
偶然とは考えにくく、Mさんと妹はおばあさんが最後のあいさつに来てくれたのだと思うことにした。
こちらは本に書かれていない物語(個人の体験談)ですが、九十九怪談には背中がぞくっとする話から、不思議な話まで、タイトルの通り九十九話収められています。
1つの話も2〜3ページ程度に収まっており、変な脚色がないため、個人の経験談を聞いているような気分になります。
九十九怪談はシリーズになっているので、第二夜も気になっています。
夏といえば怖い話。
ぜひこの時期に読んでみてはいかがでしょうか。
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