アイオワ州スペンサーの公立図書館
真冬の返却ボックスに入っていたのは
凍えきった生後間もない子猫だった
ここからある図書館館長の回想が始まる
『Dewey the Library Cat』
Vicki Myron 著
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ノンフィクションの洋書です。
図書館に動物がいること、
ましてや図書館で動物を飼うことは日本では考えられないことですが、
幸運にも-15度の極寒を生き延びた子猫はスペンサー公立図書館のねこになります。
名前は「デューイ・リードモア・ブックス」
図書館でねこを飼うことにもちろん苦情はありましたが、図書館館長のヴィッキーは役員とともにデューイを図書館ねことして迎えることを決意します。
デューイの噂はラジオや新聞によって、また人々によって州を越え国を越え、各国から人々が図書館を訪れました。日本のテレビクルーも来たほどだったそう。
デューイには人を惹きつける魅力がいっぱいありました。
美しい毛並みや瞳、子供に逆さ吊りにされても我慢する忍耐強さ、輪ゴムや特定のエサ以外は食べない偏食さ。
ねこらしい悪戯っぽさやちょっとした意地悪さも兼ね備えているものの、何より独りの人、優しさを求めている人にそっと寄り添う温かさがありました。
デューイが図書館ねことして働き始めてから、図書館の利用者は増え、図書館のイベントの参加率も驚くほど上がったことが記録されています。
ただし、ねこを買うことの素晴らしさや楽しさだけを伝えているものではないところも見どころの一つです。
ねこにとって危険なものも図書館にあること、図書館を脱走してしまった時のこと、餌代や世話はほとんど図書館員のボランティアによるものであったことなどは、公共施設で動物を飼うことについて懸念の声が上がることももっともだと思えます。
また、デューイの老年には、抜け毛やトイレの失敗、やつれた見た目から図書館ではなく館長の自宅で世話をすべき(図書館ねことして置いておくべきではない)と言った意見が多く寄せられるようになったことがあったようです。
図書館という公共の施設で、動物の介護や看取りがどれだけできるのか、動物にとっての最善の選択は何なのかを考えさせられました。
猫好きの方は、特に共感できる1冊になるかと思います。