小学生の時の国語の教科書とか、子供のころに読んだ絵本って
改めて読むと「深いなあ」って思うことはありませんか?
短い文と挿絵の中に、子供の時には気づかなかった、わからなかった意味を見出すとため息が出てしまいます。
あるアメリカの哲学者の書いた、唯一の絵本。
葉っぱとして生まれた主人公が、季節や葉の色の変化を通して「いのち」というテーマに向き合う物語です。
主人公は葉っぱなのですが、人の命というものをテーマに取り上げています。
ちょうど今紅葉の時期で、桜やもみじ、イチョウの葉が目を楽しませてくれる季節ですね。同じ木でも場所によっては葉の形や紅葉する色が違っていて個性があるなあと思います。
木や環境が違えば葉の形や紅葉するときの色も違うし、紅葉しない葉もあります。
絵本でも、葉っぱによって違いがあることに言及されており、転じて人間の社会を指しているように思えます。
この物語では、主人公は葉っぱなので、落葉することが命の終わりとされています。それは「引っ越し」と呼ばれています。
主人公は死を恐れ、次々と散っていく仲間たちをとても悲しく思います。
そんな時、親友にある言葉をもらいます。
まだ経験したことがないことは、こわいと思うものだ。でも考えてごらん。世界は変化しつづけているんだ。変化しないものはひとつもないんだよ。
生きているうえで変化は避けられない。怖いと思うのは当然だけど、それが運命なんだ、と。わかっているようでわかっていないことをこのように言葉にされると刺さるものがあります。
きみは春が夏になるときこわかったかい?緑から紅葉するときこわくなかったろう?ぼくたちも変化しつづけているんだ。死ぬというのも変わることの一つなのだよ。
いつかは死ぬさ。でも”いのち”は永遠に生きているのだよ。
小さな個としての命は終わっても、「いのち」の連鎖は終わらない。子孫を残さないとしても、個が成したこと、残したことは未来へつながっていく。
やがて主人公も木から離れ、「いのち」を終える時がやってきます。
穏やかな気持ちで地面におりた主人公は、自分の生えていた木の全体をようやく見ることができます。そして次の「いのち」の一部となっていきます。
今の季節におすすめの一冊です。