Mikatsuの本棚

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お金があれば安心か

2019年に金融庁が発表した「老後2000万円問題」以降、老後のお金の不安は一気に加速した気がする。不景気、上がらない給料、増税社会保険料の増額、物価高など、お金の不安は多くの人が持っている。生活のために節約し、投資し、老後に備えるのは今や当たり前。では、お金さえあれば安心なのだろうか?それはいくらなのだろうか?

お金の不安というのはつかみどころがない。今日食べるものに困っているというほどではなくても、将来子どもが大学進学するときに十分なお金があるか、老後にこれからの貯金で生活を賄うことができるのか、この先日本はどうなっていくのかという漠然とした不安を抱えている人は多いと思う。この本では貯金や投資をすすめているわけではない(否定もしていない)。この本ではこのぼんやりとした「お金の不安」が現実とどのようにつながっているのかを解き明かし、「お金」以外の重要なことを読者に気づかせようとしている。

まず重要なことは、自分の価値基準を持つことだと筆者は述べている。本では1,000円のメロンジュースがある日割引で半額になっていたため購入するが、翌日さらに安くなっていたという問題があり、はたして自分は得をしたのか損をしたのかと問われる。値段だけを見れば定価より安く購入できたので得をしたようにも見えるし、もう一日待てばもっと安く買えたと損をしたようにも見える。けれどそもそもこのメロンジュースがまずくて飲めたものではなかったとしたら、お金を払った価値はあったのだろうか?というのがこの問いの趣旨だ。今の社会は値段や損得に振り回されすぎているのかもしれない。「みんな」が価値があると言い、「みんな」が欲しいというものを手に入れることが価値なのか?「あなた」は何に価値を見出すのかを問われると、言葉に詰まるものがあった。自分の「価値のモノサシ」を見つける重要性を筆者は説いている。

投資について「こうするといいですよ」というようなアドバイスはこの本にはないが、「こういうセールストークに気をつけて」というアドバイスはある。投資詐欺やなりすまし詐欺はもはやそこらじゅうで見かけるが、人はうまい話を信じたいし、投資で成功した人の話を聞くと自分もできるのではと思う生き物だ。けれど、投資で失敗した人が「私はこれで〇千万損しました!」と大々的にSNSに投稿することはないので、生存バイアスであるということを知らせてくれる。そして投資は投資を推し進めている人たちが得をする仕組みであることを前提にした方がいいということも教えてくれている。

お金がすべてではないにしても、ではほかに重要なものは何があるかと言えば、「愛」と「仲間」であるらしい。小学生から大人まで、この「愛」「仲間」「お金」のどれが一番大事かを質問すると子供ほど「仲間」、年齢が上がるにつれて「お金」と答える人の割合が多いようだ。この結果は特に不思議でもない。年齢が上がり働くようになるにつれてお金の重要性がより感じられるからだ。別に悪いことではない。けれど、働き手や自分のためにやってくれる仲間や人がいなければ、サービス料として払わなければいけないお金は当然増えるし、なによりビジネスライクな関係だけでは孤独感にさいなまれることも増えていくだろう。「愛」や「仲間」がお金に劣ると思わない方がいいと筆者は警鐘を鳴らす。

そして、お金があれば安心ではないというのがこの本の結論だ。今の日本で問題になっている少子化対策や日本のための政策は、働き手が増えることによる経済や物価の安定につながる、かつ自分たちの今の行動(例えば政治参加)で変えられる現実だと述べている。ちょうど衆議院選挙が迫っている今日この頃、自分の行動がぼんやりお金に不安を抱いている現状を変えられるということを教えてくれる一冊だった。