ミステリーにおいて、警察はもちろん探偵も何らかの捜査権限を持つ。容疑者のアリバイを調べ、証拠を探し、事件の謎を紐解く。もし、それらの権限がなければ、手に入れられる情報はとても限られる。では、マジシャンはどうやって真相にたどり着くのか。
(あらすじ)
結婚を間近に控えた真世に警察から連絡があった。教師であった父が殺害されたというものだった。容疑者はかつての同級生たち。不安のさなか、疎遠だった叔父・武史が事件解決に乗り出すことを知り、真世も協力することにする。元マジシャンの経験を活かし、武史は様々なトリックを使い真相に近づいていく。
東野圭吾作品に新たなヒーローが誕生したとの帯にひかれて読み始めたら、あっという間に読み終えていた。被害者遺族であり、武史に至ってはアリバイがないため容疑者の一人とみられているため、警察から得られる情報はほとんどない。実家も立入禁止なうえ、父のスマートフォンや電話も警察に持っていかれてしまう。捜査状況は分からないけれど、容疑者は近々同窓会で会うであろう主人公の同級生たち。人格者であった父はなぜ殺されたのか、途方に暮れる主人公の前に表れたのが叔父だった。
新たなヒーローとはこの元マジシャンの叔父を指すのだが、横柄な態度やケチな様子はかっこいい探偵像とは合わない。けれど、人間観察力に優れていて、警察だろうと何だろうとトリックや心理術を使いながら必要な情報を集めていく。事件の真相のほかに、友人の夫婦関係や真世の悩みをさりげなく解決に導く描写も見どころだ。
