スマートフォンの普及によって人々の生活は大きく変わった。便利になった半面、メンタルヘルスに悪影響を及ぼすともいわれている。不安や退屈をスマホで埋めてしまわないように、どんなことができるだろうか。
ニュースをチェックし、ゲームやアプリのログインボーナスを稼ぎ、SNSでつながっている人たちにリアクションする。絶えずあふれる情報と刺激の源泉であるスマホを使わないで生きることは今やかなり難しい。電車内、カフェやレストランで注文したものが来るまでの間、友人との待ち合わせ前など、時間を持て余せばすぐにスマホに手が伸びる。スマホを手にする以前はこのような時間をどのように過ごしていたのかもはや想像できない。
けれど、そんな「常時接続の世界」に疲れてきているのも確かだ。YouTubeのおすすめ動画をなんとなく見て1日を過ごしたり、マルチタスクや即時性に慣れてしまったあまりに一つのことに集中したり時間がかかるようなことへの耐性が薄れてしまったりしてきている。
この本では、哲学者の考えや映画、アニメを具体例にとりながら、スマホとの付き合い方、「常時接続の世界」での自分の時間の過ごし方についてガイドしてくれている。いわゆるSNS断ち、スマホ断ちについては懐疑的な立場を取っている。重要なのは「孤独」な時間を持つことであり、現代において生活と切り離しがたいツールであるSNSやスマホを物理的に断ってしまうことは現実的ではないからだ。
本書で取り上げられている言葉には、辞書的な意味とは異なる定義づけがされているため、読み進めていくにあたって注意が必要だ。「孤独」にはネガティブなイメージを持つこともあるが、筆者は「自分と向き合う状態、他者から切り離されて何かに集中している状態」のことを指して使用している。また、「孤立」「寂しさ」とも区別している。
哲学者の言葉の引用とその解説、具体例が多くとても読みやすいけれど、内容を理解して実践できるようになるまでにはまだ時間がかかりそうな本だ。自分の感情や感動を大切にしたい、はっきりとしない状態もイライラとせず受け入れられるようになりたい、アテンションエコノミーに振り回されないようにしたい人にはぜひおすすめの一冊。
