Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

人を形作るもの

大自然と旅、そして書物が、娘を育むための大事な要素だ(はじめに)

テルマエ・ロマエ』の作者による自伝的エッセイ。母、妹と北海道で幼少期を過ごし、17歳でイタリアに留学する。極貧生活ながら学業にいそしむ傍ら、様々なバックグラウンドを持つ作家たちと交流し、教養や人生について考える。帰国後も息子と国内外の旅を通して、筆者を形作った書籍の紹介も交えながら、自分の半生を振り返っている。

留学や仕事で海外生活を経験すると、新しい世界に魅了される半面、生活に苦しむことや孤独感にさいなまれることがある。自分の中の常識が揺らぎ、これまで知らなかった世界に圧迫されるような場面も出てくる。それでも、そのような経験がまた自分を作り上げていく。この本を読みながら留学生活のことを思い出し、あの時この本が手元にあればと思った。

美術史の知識はもちろんのこと、著者はかなりの読書家のようで、自分に影響した本を各章で紹介している。その本とどのようなときに出会い、どんなふうに感じたかを読んでいると、つい読みたくなった。

たとえ今、自分のそばに、自分の気持ちを分かち合える人がいなくて、孤独の中にいるとしても、本の中にはいるかもしれない、本の中にいるその人と対話することで、自分が感じている漠然とした寂しさみたいなものが、自分ひとりのものではないことを、人は知るのだと思います。(p.166,167)

また、本を読むだけでなく、読んで考えたことをアウトプットする重要性、生きる場所を今ここだけに限定せず、新たな世界へも飛び込むべきだとの意見も参考になった。