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山と生きる

今では斜陽産業といわれている林業に携わる人たちがいる。木を植え、育て、使う。山と生きる人々の一年間は、のんびりしているようで驚きに満ちている。

(あらすじ)

高校卒業後、担任の斡旋で強制的に横浜から神去村に送り込まれた平野勇気は、訳も分からないまま林業会社の研修生となる。知り合いもおらず、携帯もつながらず、林業のりの字も知らない勇気は、山で生きる先輩たちにしごかれ、励まされながら村で働くこととなる。

 

この小説を通して初めて林業に携わる人々の一年を垣間見た。ただ手ごろな木を切ればいいというわけではなく、山を管理し、木の世話をし、花粉症に苦しみ、山に感謝して仕事をする。山火事や遭難の危険とも隣り合わせの仕事だ。田んぼや畑も作り、祭りごとにも精を出す。フィクションだけれど自然に囲まれた生き生きとした生活ぶりが想像できた。

木はすぐには育たないけれど、山が荒れないように毎日することがある。人出が少ないため、以前は分業していた作業もチームですべてこなすようになったという描写が現実味を帯びていた。村にはショッピングモールやコンビニはなく、交通手段も非常に限定的なため、主人公の脱出の試みは絶望的だ。最初は退屈さと仕事の過酷さで辟易していた主人公が次第に山の営みの変化や生き物の気配、星空に目を向けていく様子が印象的だった。

もちろんきれいなことばかりではない。村特有の閉塞感や疎外感、地域の過疎化の問題、村でよそ者扱いされたかと思えば、地元の友人や家族とあっさり連絡が途絶えてしまう寂しさも描写されており、主人公を気の毒に思うこともある。

自然を相手に生きていくことは過酷で、けれど魅力的だと思える一冊だった。