Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

無理だと思ったら

災害救助用のドローンの開発が進んでいる。人がすぐに救助に向かえない場所へも、ドローンを飛ばして被災者を安全な場所に誘導することができる。被災者が健常者であれば。

(あらすじ)

「無理だと思ったら、そこが限界だ」

ドローン開発会社に勤める高木は、子どものころに亡くした兄の言葉を胸に災害救助ドローンの普及に注力する。ある日、参加していた地下五階建てのスマートシティWANOKUNIプロジェクトのイベント中に大地震が発生し、地下に一人取り残された人がいることが判明する。取り残された被災者のためにドローンでの救助活動に要請された高木は、WANOKUNIプロジェクトのアイドル的存在の「見えない・聞こえない・話せない」三重苦をかかえる女性をシェルターに誘導するという任務にあたる。行政、消防、民間会社、介助者それぞれの視点を生かし、タイムリミットまでに被災者救助に乗り出す。

 

「無理だと思ったら、そこが限界だ」という言葉がこの物語で大きな意味を持つ。主人公は過去に自分が勇気を持てなかった後悔から、つい自分をないがしろにしてまで無理をしてしまう。しかし、この言葉はいい意味にも悪い意味にも使われる。最後に、兄が言った言葉の本当の意図に気づく。

ドローン技術は目覚ましく、周辺探知や音声認識、物資搬送も可能だ。けれど誘導対象が障がい者であることで、救助の難易度が極端に上がる。ドローンでは、相手の手を取ることも、指文字で伝えることもできない。声の出せない相手に対しては音声認識も役に立たないのだ。災害救助の技術にはまだまだ障壁が多いことに気づかされる半面、救助者たちのたゆまない努力にフィクションとはいえ頭の下がる思いがした。

この物語では障がい者について大きくふれられている。知事の姪として大々的に取り上げられ、アイドルとして祀り上げられる一方で、障がいに対しての偏見や中傷にもさらされる。健気に生きていても、人生を楽しんでいても、障がい者としてくくられ、障がい者同士でも疎まれたりもする。健常者として普段意識することのない側面を垣間見れる作品でもある。

途中で被災者の障害の程度についてある疑念がわくものの、並行して進むいくつかの描写が繋がり、最後にはその謎が解ける。