炭鉱のカナリア、警鐘を鳴らす存在。かつて炭鉱で働く人が有毒ガスに敏感なカナリアを連れて現場に入り、危険察知に役立てたことからこの言葉ができた。
香害、低・高周波の騒音、日光や一般的に用いられる化学物質など、大多数の人には何でもないものが、ある一定の人には体調不良を引き起こす。過敏症と呼ばれる状態に苦しむ人々は、もしかしたら現代社会における炭鉱のカナリアかもしれない。
(あらすじ)
保泉クリニックでは毎週水曜日の午後、予約制で過敏症外来が開かれる。化学物質過敏症で人工的な香りに苦しむ女性、夫源病を疑う主婦、味覚障害を引き起こした元シェフ、肌の弱い子供をもつ親、シックハウス症候群疑いの家主、周囲には理解されない様々な悩みをもつ患者たちが、不愛想な院長の保泉則子と原因解明と解決策を模索する物語。
過敏症というのは、自分ではどうにもできないものの、周りに理解してもらうことは難しい。なぜなら大半の人には何でもないことが多いからだ。「気にしすぎじゃない?」「大げさじゃない?」と言われると何ともいたたまれない気持ちになる。例えば香水の匂いに頭痛や吐き気を覚える場合、香水をつけている人から離れられれば問題ないが、友達や同僚がつけている場合やエレベーター内にいる場合、すぐに立ち去ることができない。本人は気に入ってつけているわけで、周りが褒めている中、「頭が痛くなるからやめてほしい」と言いにくいだろう。けれど、後々それに使われていた化学物質が人体に影響を及ぼすものだったとわかる可能性は十分にある。アスベストや合成着色料も当初は広く受け入れられていたものだった。
この本の中では、必ずしも登場人物たちの症状が改善し、めでたしめでたしとなるわけではない。けれど自身も含めて周囲に理解者を増やすこと、その必要があること、寄り添ってくれる人がいるということが前進と救いをもたらすという前向きな内容であり、読んでよかったと思った。
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