Mikatsuの本棚

本を読んだ感想など書いています

作者の心の内

このブログで何冊か紹介し、そのたびに書いているような気もするけれど、梨木香歩さんの作品が好きだ。静かに自然を見つめる描写や、その時の空気の匂いすら感じられるような筆致、つかめるようなつかめないような人柄の登場人物たち。ファン、というほどではないけれど、題名と帯の一言にひかれてまた一冊。

創作する作家として、好奇心溢れる旅行者として、地道に日々を重ねる生活者として。

世界に触れ、感じ、考え、書いてきた25年間の軌跡(帯より)

子どもの頃の思い出、作品の着想を得たきっかけや映画撮影時の思い、国内外の旅行や取材で感じたこと、料理や家のこと、雑誌や新聞へ寄稿したものが収録されている。作者の頭の中というか心の内というか、文章からぼんやりと作者自身がにじみ出るようなエッセイだった。共感できるところがあると、なんとなく近しく感じられて嬉しくなる。限りある自然に思いをはせたり、事故や災害に心を痛めたり、作品だけからでは知る由もなかった作者のことが知れた。エッセイの中でふれられていた作品を読んだことがあれば、ある種のネタバレ、創作秘話を知った気になった。

まだ読んだことのない作品も多いので、手に取っていけたらと思う。